院長 内藤 久美子

監修

院長:内藤 久美子

さっぽろ大通内分泌クリニック/内分泌・糖尿病・女性ヘルスケアの3つの専門医

「ブライダルチェック」という名前が、いちばんの壁かも

「結婚の予定はないんですけど、こういう検査って受けてもいいんですか」

診察室でときどき、申し訳なさそうにそう尋ねられることがあります。そのたびに、この検査の名前は失敗だったのではないか、と思ったりもしています。

ブライダルチェック。結婚前に受ける検査、という意味の言葉です。けれど中身をよく見ていくと、これは結婚のための検査ではありません。

名前と中身がずれている

ブライダルチェックと呼ばれている検査の中身は、貧血、肝臓と腎臓の働き、血糖、甲状腺の機能、そして風疹やB型肝炎などの感染症です。子宮頸がん検診や、クラミジアの検査が加わることもあります。

このなかに、結婚することで変わるものは一つもありません。

では何のための検査かというと、妊娠する前に確かめておくためのものです。

近年は「プレコンセプションケア」という言い方をします。

コンセプションが受胎、プレが前。つまり妊娠前のケア、という意味です。

結婚と妊娠は、重なることもあれば、重ならないこともあります。結婚しても妊娠を考えない方はいますし、結婚の予定がなくてもいずれ子どもを持ちたいと考えている方はいます。それなのに検査の名前だけが結婚に紐づいているせいで、受けたほうがいい方が「自分には関係のないもの」と判断してしまう。

冒頭の質問は、そういうずれから生まれているのだと思います。

妊娠してからでは間に合わないことがある

ではなぜ「妊娠前」なのか。妊娠がわかってから調べればいいのではないか、と思われるかもしれません。実際、妊婦健診では同じような項目をひと通り調べます。

けれど、いくつかの項目は妊娠前でないと意味をなしません。

風疹の予防接種

風疹のワクチンは生ワクチンなので、妊娠中に接種することができません。抗体が足りないとわかっても、妊娠してからでは打てない。打てるのは妊娠前だけです。

接種した場合はその後しばらく避妊が必要になりますから、妊娠を考えはじめる時期から逆算しておく必要があります。

甲状腺のはたらき

あまり知られていませんが、赤ちゃんの甲状腺は妊娠12週ごろまで自分ではたらくことができません。それまでのあいだ、赤ちゃんは母体の甲状腺ホルモンをそのまま使って育ちます。この時期は、脳の発達がはじまる時期でもあります。

つまり母体の甲状腺機能が低下していた場合、その影響を受けるのは「妊娠がわかるより前」から「12週まで」という、いちばん早い時期です。妊娠に気づくのは早くても5週や6週ですから、気づいた時点ですでに何週か過ぎている。ここを整えておけるのは妊娠前だけなのです。

甲状腺の機能が低下していても、自覚できる症状が出ないことは珍しくありません。疲れやすい、寒がりになった、といった変化は日常のなかに紛れてしまいます。血液検査で調べてはじめてわかる、という方が多いのが実際のところです。

血糖

血糖も同じ構造です。赤ちゃんの体の形がつくられるのは妊娠4週から10週ごろ。妊娠に気づく時期とほとんど重なっています。

血糖が高い状態のまま妊娠初期を過ごすことは避けたいので、妊娠前に把握して、必要なら整えておく意味があります。

試験当日に教科書を開いても

たとえるなら、試験のようなものだと思っています。

試験当日に教科書を開いても、できることはあまりありません。読んで理解して身につけるには時間がかかるからです。準備ができるのは試験の前だけです。

妊娠も似ています。甲状腺ホルモンの量を適切に調整するには数か月かかりますし、風疹の抗体ができるまでにも時間が必要です。貧血を治すのにも、鉄を補って数か月かかります。

妊娠がわかった時点でできることは、もちろんあります。けれど「前もって整えておく」という選択肢は、その時点で失われています。

「考えている」の幅は、広くていい

こう書くと、きちんと計画を立てている方だけのもののように聞こえるかもしれません。そんなことはありません。

いつかは子どもがほしいと思っている。パートナーと話が出はじめた。まだ具体的ではないけれど、年齢を考えると意識はしている。そのくらいの段階で十分だと思います。

むしろ、妊娠を強く意識してから慌てて調べるより、少し前の落ち着いた時期のほうが向いています。何か見つかったときに、治療する時間の余裕があるからです。

見つかって困るのではなく、見つかって整えられる時期に受ける。そこに意味があります。

見つけたあとのほうが長い

当院は糖尿病・内分泌・代謝内科を専門にしています。だからどうしても、検査そのものより「見つかったあと」のほうが気になります。

甲状腺の機能が少し低い。血糖が基準を少し超えている。貧血が続いている。こうした結果が出たとき、大切なのは検査したことではなく、そこから何をするかです。薬の量を調整して数値が落ち着くのを待つ。鉄を補って貯蔵鉄が戻るのを確かめる。どれも治療開始時間のかかる作業です。

検査は入口にすぎません。本当に必要なのは、そのあとの数か月です。

だからこそ、妊娠を考えはじめた「少し前」に受けていただきたいと思っています。

名前は変えられないけれど

「ブライダルチェック」という呼び名は、すでに広く使われています。この名前で調べる方が多い以上、当院でもこの言葉を併記しています。名前そのものを変えることはできません。

けれど、意味は伝えられます。

これは結婚する方のための検査ではなく、いつか妊娠したいと考えているすべての方のための検査です。結婚の予定は関係ありません。パートナーがいるかどうかも、この検査を受ける条件ではありません。

冒頭の質問に、あらためて答えるとしたら、こうなります。

受けていいですよ。というより、そのために用意されている検査です。ご相談ください。

当院の妊娠前の検査について

当院では「プレコンセプションチェック(ブライダルチェック)」として、妊娠前に確認しておきたい項目を採血で調べています。甲状腺の機能や糖代謝、貧血の評価を含み、異常が見つかった場合には内分泌代謝の専門医がそのまま診療を継続します。

検査項目はすべて公開しています。ご希望に応じて、婦人科の検査を追加することもできます。

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費用とご注意

  • 本検査は自由診療(保険適用外)です。費用は基本の採血が16,500円(税込)で、追加する検査により変わります。詳細は上記のご案内ページをご覧ください。
  • 検査結果が正常であっても、将来の妊娠を保証するものではありません。また、不妊症、流産、胎児の異常、将来の感染が起こらないことを意味するものでもありません。
  • 感染症には、感染から検査で陽性となるまでに時間を要する時期があり、この時期の感染は陰性と判定されることがあります。
  • 検査で異常が見つかった場合、追加の検査や治療は本検査の費用に含まれません。医学的に必要と判断される場合は、あらためて保険診療としてご案内します。
  • 採血のみを受けられる場合、内診はありません。婦人科の検査を追加される場合は内診を伴います。
  • ご不明な点は、さっぽろ大通内分泌クリニックまでお問い合わせください。

よくあるご質問

結婚の予定がなくても受けられますか

受けられます。将来の妊娠に備えるための検査ですので、結婚の予定の有無は関係ありません。

妊娠を具体的に計画していないのですが、早すぎませんか

早すぎることはありません。何か見つかった場合に整える時間があるという点で、むしろ余裕のある時期のほうが向いています。

妊娠がわかってからでは遅いのですか

妊娠後の検査にも意味はありますが、風疹の予防接種は妊娠中に受けられません。甲状腺や血糖のように、妊娠のごく初期から影響する項目もあります。妊娠前にしかできないことがある、とお考えください。

内診はありますか

検査の内容によります。採血だけを受けられる場合、内診はありません。

保険は使えますか

妊娠前の検査は自費診療です。検査で異常が見つかり治療が必要と判断された場合、その後の診療は保険診療になることがあります。

気になった方はお気軽にご相談ください

札幌・大通で、女性ヘルスケア専門医が、更年期や月経・ホルモンの不調を、同じ女性の立場で親身に診療します。Web予約で待ち時間を抑えて受診いただけます。

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